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イケメン文学男子(世阿弥先生・源隆国先生・芥川龍之介先生・太宰治先生)

イケメン文学男子ブーム到来中!芥川龍之介先生!舞踏会!本文!作品まとめ!作品解説

投稿日:2018年7月21日 更新日:

イケメン文学男子ブーム到来中!芥川龍之介先生!舞踏会!本文!作品まとめ!作品解説


 
このブログをご覧頂きありがとうございます!
文学に生きたイケメン文学男子達の作品を描いていきます。
今回は芥川龍之介先生の舞踏会です。

女性の髪のお悩みに。デルメッド

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☆イケメン文学男子シリーズ前回の作品です☆
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イケメン文学男子ブーム到来中!鴨長明先生!方丈記。行く河の流れは絶えずして!本文!作品まとめ!作品解説


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芥川龍之介先生 舞踏会 本文

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舞踏会 芥川龍之介 一
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明治十九年十一月三日の夜であった。

当時十七歳だつた――
家(け)の令嬢明子(あきこ)は、
頭の禿げた父親と一緒に、

今夜の舞踏会が催さるべき
鹿鳴館(ろくめいかん)の
階段を上って行った。

明るい瓦斯(ガス)の
光に照らされた、
幅の広い階段の両側には、

殆(ほとんど)人工に近い
大輪の菊の花が、
三重の籬(まがき)を造っていた。

菊は一番奥のが
うす紅(べに)、
中程のが濃い黄色、

一番前のが真っ白な花びらを
流蘇(ふさ)の如く
乱しているのであった。

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そうして
その菊の籬(まがき)の
尽きるあたり、

階段の上の
舞踏室からは、
もう陽気な管絃楽の音が、

抑へ難い
幸福の吐息のように、
休みなく溢れて来るのであつた。

明子は夙(つと)に
仏蘭西(フランス)語と舞踏との
教育を受けていた。

が、正式の舞踏会に臨むのは、
今夜がまだ生まれて
始めてであった。

だから彼女は馬車の中でも、
折々話しかける父親に、
上(うわ)の空の
返事ばかり与へていた。

それ程彼女の胸の中には、
愉快なる不安とでも形容すべき、
一種の落着かない心もちが
根を張っていたのであった。

彼女は馬車が
鹿鳴館の前に止るまで、
何度いら立たしい眼を挙げて、

窓の外に流れて行く
東京の町の乏しい燈火(ともしび)を、
見つめた事だか知れなかった。

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が、鹿鳴館の中へはいると、
間もなく彼女は
その不安を忘れるような
事件に遭遇した。

と云うのは
階段の丁度中程まで来かかった時、
二人は一足先に上って行く
支那の大官に追いついた。

すると大官は
肥満した体を開いて、
二人を先へ通らせながら、

呆(あき)れたような視線を
明子へ投げた。

初々(ういうい)しい
薔薇色の舞踏服、

品好く頸(うなじ)へかけた
水色のリボン、

それから
濃い髪に匂つている
たった一輪の薔薇の花――

実際その夜の明子の姿は、
この長い辮髪(べんぱつ)を垂れた
支那の大官の眼を驚かすべく、

開化の日本の少女の美を
遺憾(いかん)なく
具(そな)えていたのであった。

と思ふと又階段を急ぎ足に下りて来た、
若い燕尾服(えんびふく)の日本人も、
途中で二人にすれ違いながら、

反射的にチョイと振り返って、
やはり呆(あき)れたような
一瞥(いちべつ)を
明子の後姿に浴せかけた。

それから何故か思いついたように、
白い襟飾(ネクタイ)へ
手をやって見て、

又菊の中を忙しく
玄関の方へ下りて行った。

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二人が階段を上り切ると、
二階の舞踏室の入口には、

半白の頬鬚(ほほひげ)を
蓄(たくわ)えた主人役の伯爵が、
胸間に幾つかの勲章を帯びて、

路易(ルイ)十五世式の
装いを凝(こ)らした
年上の伯爵夫人と一緒に、
大様(おおよう)に客を迎えていた。

明子はこの伯爵でさへ、
彼女の姿を見た時には、

その老獪(ろうかい)らしい
顔の何処かに、
一瞬間無邪気な

驚嘆(きょうたん)の色が
去来(きょらい)したのを
見のがさなかった。

人の好(よ)い明子の父親は、
嬉しそうな微笑を浮べながら、

伯爵とその夫人とへ
手短(てみじか)に娘を紹介した。

彼女は羞恥(しゅうち)得意とを
交(かわ)る交(がわ)る味った。

が、その暇にも
権高(けんだか)な
伯爵夫人の顔だちに、

一点下品な気があるのを
感づくだけの余裕があった。

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舞踏室の中にも至る所に、
菊の花が美しく咲き乱れていた。

そうして又至る所に、
相手を待っている

婦人たちのレエスや花や象牙の扇が、
爽かな香水の匂(におい)の中に、
音のない波の如く動いていた。

明子はすぐに父親と分れて、
その綺羅(きら)びやかな
婦人たちの或(ある)一団と
一緒になった。

それは皆同じような
水色や薔薇色の舞踏服を着た、
同年輩らしい少女であっった。

彼等は彼女を迎えると、
小鳥のようにさざめき立って、

口口(くちぐち)に
今夜の彼女の姿が
美しい事を褒め立てたりした。

が、彼女がその仲間へはいるや否や、
見知らない仏蘭西(フランス)の海軍将校が、
何処からか静(しずか)に歩み寄った。

そうして両腕を垂れた儘(まま)、
叮嚀(ていねい)に
日本風の会釈(えしゃく)をした。

明子はかすかながら血の色が、
頬に上って来るのを意識した。

しかしその会釈が
何を意味するかは、
問うまでもなく明かだった。

だから彼女は手にしていた
扇を預って貰うべく、
隣に立っている
水色の舞踏服の令嬢をふり返った。

と同時に意外にも、
その仏蘭西の海軍将校は、
ちらりと頬に微笑の影を浮べながら、

異様なアクサンを帯びた日本語で、
ハッキリと彼女にこう云った。

「一緒に踊っては下さいませんか。」

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間もなく明子は、
その仏蘭西(フランス)の海軍将校と、
「美しく青きダニウブ」の
ヴァルスを踊っていた。

相手の将校は、頬の日に焼けた、
眼鼻立ちの鮮(あざやか)な、
濃い口髭のある男であった。

彼女はその相手の軍服の左の肩に、
長い手袋を嵌はめた手を預くべく、
余りに背が低かつた。

が、場馴れてゐる海軍将校は、
巧(たくみ)に彼女をあしらって、
軽々と群集の中を舞い歩いた。

そうして時々彼女の耳に、
愛想の好い仏蘭西語の
御世辞さへも囁(ささや)いた。

彼女はその優しい言葉に、
恥しそうな微笑を
酬(もら)いながら、

時々彼等が踊っている
舞踏室の周囲へ眼を投げた。

皇室の御紋章を染め抜いた
紫縮緬(むらさきちりめん)の
幔幕(まんまく)や、

爪を張った蒼竜(そうりゅう)が
身をうねらせている
支那の国旗の下には、

花瓶々々の菊の花が、
或は軽快な銀色を、
或は陰欝(いんうつ)な金色を、
人波の間にちらつかせていた。

しかもその人波は、
三鞭酒(シヤンパアニュー)のように
湧き立って来る、

花々しい
独逸(ドイツ)管絃楽(かんげんがく)の
旋律の風に煽られて、

暫(しばら)くも
目まぐるしい
動揺を止めなかった。

明子はやはり踊っている
友達の一人と眼を合わすと、
互に愉快そうな頷(うなず)きを
忙しい中に送り合った。

が、その瞬間には、
もう違った踊り手が、
まるで大きな蛾(が)が狂うように、
何処からか其処へ現れていた。

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しかし明子は
その間にも、
相手の仏蘭西(フランス)の

海軍将校の眼が、
彼女の一挙一動に
注意しているのを知っていた。

それは全くこの日本に慣れない外国人が、
如何(いか)に彼女の快活な舞踏ぶりに、
興味があったかを語るものであった。

こんな美しい令嬢も、
やはり紙と竹との家の中に、
人形の如く住んでいるのであろうか。

そうして細い金属の箸で、
青い花の描いてある手のひら程の茶碗から、
米粒を挾んで食べているのであろうか。

――彼の眼の中にはこう云う疑問が、
何度も人懐しい微笑と共に
往来(おうらい)するようであった。

明子には
それが可笑(おか)しくもあれば、
同時に又誇らしくもあつた。

だから
彼女の華奢(きゃしゃ)な
薔薇色の踊り靴は、

物珍しそうな相手の視線が
折々足もとへ落ちる度に、

一層身軽く滑(なめらか)な
床の上を辷(すべ)って行くのであった。

が、やがて相手の将校は、
この児猫(こねこ)のような
令嬢の疲れたらしいのに

気がついたと見えて、
劬(いたわ)るように
顔を覗(のぞき)きこみながら、

「もっと続けて踊りましょうか。」

「ノン・メルシイ。」

明子は息をはずませながら、
今度はハッキリとこう答へた。

するとその
仏蘭西(フランス)の海軍将校は、
まだヴアルスの歩みを続けながら、

前後左右に動いている
レエスや花の波を縫って、

壁側(かべぎわ)の花瓶の菊の方へ、
悠々(ゆうゆう)と
彼女を連れて行った。

そうして最後の一廻転の後、
其処にあった椅子の上へ、
鮮(あざやか)に彼女を掛けさせると、

自分は一旦軍服の胸を張って、
それから又前のように
恭(うやうや)しく日本風の会釈をした。

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その後又ポルカや
マズユルカを踊ってから、
明子はこの仏蘭西の海軍将校と
腕を組んで、

白と黄とうす紅と
三重の菊の籬(まがき)の間を、
階下の広い部屋へ下りて行った。

此処には燕尾服(えんびふく)や
白い肩がしっきりなく
去来(きょらい)する中に、

銀や硝子ガラスの食器類に
蔽(おお)われた
幾つかの食卓が、

或(あるい)は
肉と松露(しようろ)との
山を盛り上げたり、

或(あるい)は
サンドウイツチとアイスクリイムとの
塔を聳(そばだ)てたり、

或(あるい)は
又柘榴(ざくろ)と
無花果(いちじく)との
三角塔を築いたりしていた。

殊に菊の花が埋め残した、
部屋の一方の壁上には、

巧(たくみ)な
人工の葡萄蔓(ぶどうつる)が

青々(あおあお)と
からみついている、
美しい金色の格子があった。

そうしてその
葡萄の葉の間には、

蜂の巣のような葡萄の房が、
累々(るいるい)と
紫に下っていた。

明子はその金色の格子の前に、
頭の禿(は)げた彼女の父親が、
同年輩の紳士と並んで、

葉巻を啣(くわ)えているのに
遇(あ)った。

父親は明子の姿を見ると、
満足そうに
チョイと頷(うなず)いたが、

それぎり連れの方を向いて、
又葉巻を燻(くゆ)らせ始めた。

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仏蘭西(フランス)の海軍将校は、
明子と食卓の一つへ行って、
一緒にアイスクリイムの
匙(さじ)を取った。

彼女はその間も相手の眼が、
折々彼女の手や髪や

水色のリボンを掛けた頸(くび)へ
注がれているのに気がついた。

それは勿論彼女にとって、
不快な事でも何でもなかった。

が、或(ある)刹那には
女らしい疑いも
閃(ひらめ)かずにはいられなかった。

そこで黒い天鵞絨(びろうど)の胸に
赤い椿の花をつけた、

独逸人(ドイツじん)らしい若い女が
二人の傍(そば)を通った時、

彼女はこの疑ひを
仄(ほの)めかせる為に、
こう云う感歎(かんたん)の言葉を発明した。

「西洋の女の方は
 ほんとうに御美しうございますこと。」

海軍将校はこの言葉を聞くと、
思いの外真面目に首を振った。

「日本の女の方も美しいです。
 殊(ことさら)にあなたなぞは――」

「そんな事はこざいませんわ。」

「いえ、御世辞ではありません。
 その儘(まま)すぐに
 巴里(パリ)の舞踏会へも出られます。

 そうしたら皆が驚くでしょう。
 ワットオの画の中の御姫様のようですから。」

明子はワットオを知らなかった。

だから
海軍将校の言葉が呼び起した、
美しい過去の幻も――

仄暗い森の噴水と
凋(すが)れて行く
薔薇との幻も、

一瞬の後には
名残りなく
消え失せてしまわなければならなかった。

が、人一倍感じの鋭い彼女は、
アイスクリイムの匙を動かしながら、

僅(わずか)に
もう一つ残っている話題に
縋(すが)る事を忘れなかった。

「私も巴里の舞踏会へ参って見とうございますわ。」

「いえ、巴里の舞踏会も全くこれと同じ事です。」

海軍将校はこう云いながら、
二人の食卓を繞(めぐ)っている
人波と菊の花とを見廻したが、

忽ち皮肉な微笑の波が
瞳の底に動いたと思ふと、
アイスクリイムの匙を止めて、

「巴里(パリ)ばかりではありません。
 舞踏会は何処でも同じ事です。」と

半(なか)ば
独(ひと)り語(ごと)のように
つけ加へた。

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一時間の後、
明子と仏蘭西フランスの海軍将校とは、
やはり腕を組んだ儘(まま)、

大勢の日本人や
外国人と一緒に、
舞踏室の外にある

星月夜(ほしづきよ)の
露台(ろだい)に
佇(たたず)んでいた。

欄干一つ隔(へだ)てた
露台(ろだい)の向うには、
広い庭園を埋めた針葉樹が、
ひっそりと枝を交し合って、

その梢(こずえ)に点々と
鬼灯提燈(ほおずきちょうちん)の
火を透(す)かしていた。

しかも冷かな空気の底には、
下の庭園から上って来る
苔の匂や落葉の匂が、

かすかに寂しい秋の呼吸を
漂(ただよ)わせているようであった。

が、すぐ後の舞踏室では、
やはりレエスや花の波が、

十六菊を染め抜いた
紫縮緬(むらさきちりめん)の幕の下に、
休みない動揺を続けていた。

そうして又調子の高い
管絃楽のつむじ風が、

相不変(あいかわらず)
その人間の海の上へ、
用捨(ようしゃ)もなく
鞭を加へていた。

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勿論この露台の上からも、
絶えず賑な話し声や笑ひ声が
夜気を揺(ゆす)っていた。

まして暗い針葉樹の空に
美しい花火が揚る時には、
殆(ほとんど)人どよめきにも近い音が、
一同の口から洩れた事もあった。

その中に交って立っていた明子も、
其処にいた懇意の令嬢たちとは、
さっきから気軽な雑談を交換していた。

が、やがて気がついて見ると、
あの仏蘭西(フランス)の海軍将校は、
明子に腕を借した儘(まま)、

庭園の上の
星月夜(ほしづきよ)へ
黙然(もくねん)と眼を注いでいた。

彼女にはそれが何となく、
郷愁(きょうしゅう)でも
感じているように見えた。

そこで明子は
彼の顔を
そっと下から覗きこんで、

「御国の事を思っていらっしやるのでしょう。」と

半(なか)ば甘えるように尋ねて見た。

すると海軍将校は
相不変(あいかわらず)
微笑(ほほえみ)を含んだ眼で、
静かに明子の方へ振り返った。

そうして「ノン」と答える代りに、
子供のように首を振って見せた。

「でも何か考へていらっしゃるようでございますわ。」

「何だか当てて御覧(ごらん)なさい。」

その時露台(ろだい)に集っていた
人々の間には、又一しきり風のような
ざわめく音が起り出した。

明子と海軍将校とは
云い合せたように話をやめて、
庭園の針葉樹を圧している
夜空の方へ眼をやった。

其処には
丁度赤と青との花火が、

蜘蛛手(くもで)に
闇を弾(はじ)きながら、
将(まさ)に消えようとする所であった。

明子には何故かその花火が、
殆(ほとんど)悲しい気を起させる程
それ程美しく思われた。

「私は花火の事を考えていたのです。
 我々の生(ヴイ)のような花火の事を。」

暫くして仏蘭西の海軍将校は、
優しく明子の顔を見下しながら、
教へるような調子でこう云った。

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舞踏会 芥川龍之介 二
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大正七年の秋であった。

当年の明子は鎌倉の別荘へ
赴(おもむ)く途中、
一面識のある青年の小説家と、
偶然汽車の中で一緒になった。

青年はその時編棚の上に、
鎌倉の知人へ贈るべき
菊の花束を載せて置いた。

すると当年の明子――
今のH老夫人は、
菊の花を見る度に
思ひ出す話があると云って、

詳しく彼に
鹿鳴館の舞踏会の思い出を
話して聞かせた。

青年はこの人自身の口から
こう云う思出を聞く事に、
多大の興味を感ぜずにはいられなかった。

その話が終つた時、
青年はH老夫人に何気なく
こう云ふ質問をした。

「奥様はその仏蘭西の海軍将校の名を
 御存知ではございませんか。」

するとH老夫人は思いがけない返事をした。

「存じて居りますとも。
 Julien Viaud(ジュリアン・ヴイオ)と
 仰有(おっしゃ)る方でございました。」

「では Loti だつたのでございますね。
 あの『お菊夫人』を書いた
 ピエル・ロテイだったのでございますね。」

青年は愉快な興奮を感じた。

が、H老夫人は不思議そうに
青年の顔を見ながら何度も
こう呟(つぶや)くばかりであった。

「いえ、ロテイと仰有る方ではございませんよ。
 ジュリアン・ヴイオと仰有る方でございますよ。」

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舞踏会 芥川龍之介 (大正八年十二月)

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芥川龍之介先生!舞踏会☆作品まとめ

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☆舞踏会(芥川龍之介先生)

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☆タイトル

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〇舞踏会(ぶとうかい)。

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☆作者

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〇芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)

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☆成立

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〇時代 大正時代(たいしょうじだい)

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☆ジャンル

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〇短編小説(たんぺんしょうせつ)

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☆全体の構成

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〇二部構成

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☆第一部

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〇(一)明子は明治19年11月が舞台で17歳の明子として登場する。、

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☆第二部

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〇(二)明子は大正7年の秋に49歳のH老婦人として登場する。

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☆初出

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〇新潮(1920年8年1月)

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☆豆知識

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〇舞踏会は著者である芥川龍之介が
 「秋の日本(ピエール・ロティ)」の「江戸の舞踏会」に着想を得た作品である。

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芥川龍之介先生!羅生門。作品解説!

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〇芥川龍之介先生の羅生門を
 更に詳しく解説していきます!!

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☆作品全体の概要

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〇舞踏会という作品は
、「美しい音楽的な短編小説」(三島由紀夫)や
 「代表的な朱雀篇」(中村真一郎)などの評を受けています。

〇舞踏会は、
 親しみやすさと奥の深さを持つ作品で
 芥川龍之介の代表作の一つです作品である。

〇 舞踏会は(一)と(二)の二部構成です。
〇(一)明子は明治19年11月が舞台で17歳の明子として登場します。、
〇(二)明子は大正7年の秋に49歳のH老婦人として登場します。

〇(一)と(二)には、三十二年という時間が経過しています。
〇舞踏会の初出稿と定稿とでは、批評により結末が変わっています。
〇つまり、明子という女性像も初出稿と定稿では変化しているのです。

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☆舞踏会のテーマ

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〇舞踏会という作品のテーマは、
 (一)のラストに海軍将校(ロティにあたる)が言う台詞に
 全て語られています。

〇「私は花火の事を考へてゐたのです。我々の生のやうな花火の事を。」

〇「花火のような生」ではなく、「生のような花火」なのです。
〇海軍将校(ロティ)の中では、
 すでに「生=はかないもの」になっています。

〇舞踏会という作品の下地になった
 「秋の日本(ピエール・ロティ)」にも花火は描かれていますが、
 ロティは花火をあっさりと扱い、
 花火を感興を盛り上げる素材の一つとして利用されています。

〇ロティの描いた海軍将校と
 芥川の描いた海軍将校とでは、
 花火への考え方に大きな違いがあります。

〇芥川は「生のような花火」という
 自分の考え方を海軍将校(ロティ)に言わせることで、
 元作「秋の日本(ピエール・ロティ)」との
 違いを際立(きわだ)たせているのです。

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